●農耕具部品 耕うん爪(H溶射爪)ができるまでをご紹介します。
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- JIS規格4801 ばね鋼鋼材SUP6種(シリコンマンガン鋼材)を使用しています。
一般の炭素鋼(SC材)に比べると焼入れ性に優れ、焼戻しという熱処理操作をする事で容易に最大級のばね特性を発揮できます。耕うん爪の取り付け部にはばね特性が必要不可欠であり、耕うん時に大きい石に衝突しても石をさけ、折れずに元の形状に復元します。また作用部に対しては焼入れ性に優れ、硬度が増すため耐磨耗性に適している材質です。
化学成分は下記の通り(単位%)
炭素(C) |
シリコン(Si) |
マンガン(Mn) |
リン(P) |
硫黄(S) |
0.56~0.64 |
1.50~1.80 |
0.70~1.00 |
0.035以下 |
0.035以下 |
材料は鋼材メーカーより定められた寸法規格のSUP6を6メートルの長さで購入します。
(各種耕うん爪により、寸法規格が変わります)
- 各種ブレードに応じ、定められた長さに冷間加工で切断します。
- 切断された鋼材をウォーキングビーム式加熱炉で適切な温度になるまで加熱します。
- 加熱された鋼材を圧延ロール機やプレス機を使用し、耕うん爪の成形をします。
この形状造り製法を、一般的に、熱間鍛造といいます。
圧延ロール機では、作用部をしごいたり、刃縁部の刃をつけたり、峰部の曲げをします。
プレス機では、取り付け部の取り付け穴明けや外形の切断、屈曲部の曲げ、端面部切断、刻印等を熱間にて成形します。
成形が終了した段階で、耕うん爪はスタンダード品と溶射品に製作工程が分かれます。
- 熱間で形状造りをした耕うん爪を、大気中で冷やします。
- 直径3ミリメートル位の鉄鋼を耕うん爪に高速で当て、加熱時、鉄鋼の表面に浮き出た脱炭層(スケール)を剥がします。(ショットブラスト)
また高速で衝撃を与える事で、耕うん爪の表面に熱が生じ若干の表面強化処理できます。(ショットビーニング)
- 耕うん爪の屈曲部の背面側刃縁部に約25ミリメートルの幅で金属粉末を付着させ、無酸化雰囲気電気炉で加熱し、耕うん爪と金属粉末を溶着させます。
弊社での金属粉末は、ニッケルがベースになっています。
- 回転炉にて再加熱した後、焼入れ槽に投入して急速冷却します。
焼入れとは鉄鋼を硬化させるため、適当な温度に加熱した後、急速に冷却する作業です。ユックリと冷却した場合は焼入れになりません。SUP6の場合、油で急速に冷却します。
焼入れ条件は、耕うん爪の温度が850℃以上で、それ以下と判断された場合、耕うん爪を焼きなました後に再加熱をして焼入れ作業をします。温度は鉄鋼の色で判断します。
焼き入れ後にロックウェル硬さ試験機(ダイアモンド円すい体を一定加重で耕うん爪に押し付け、この時できるくぼみの深さで、硬さを計測する試験機)を使用し硬度検査をします。
この焼入れ操作で耕うん爪の全体硬度は、HRC59~61となります。
- 焼入れ処理だけでは脆く簡単に破損してしまうため、焼戻し作業します。鋼材内の荒い組織を細かい組織へ変化させ、耕うん爪全体に靭性をもたせます。
焼戻し温度は指定された硬度により変化します。焼戻し後に硬度検査をします。
- 再度ショットブラスト、ショットビーニングします。
- 最後に黒色焼付け塗装して完成です。あとは梱包して出荷します。